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♪♪♪♪♪「バロック式」はなぜ優れているのか。
ドイツ式の悪口ばかり言ってましたが、この辺でなぜバロック式をそんなに擁護するのかを述べます。

まず第一に言えることはバロック式の指使いは人類の知恵の結晶だということ。
別の項目にも書きましたがこの指使いが決まるまで多くの方の試行錯誤が100年以上続いたことと思われます。

その試行錯誤の中にはもちろん「なるべくやさしい指使い」を求めたという事実を否定できないと思います。
誰でも「より易しいもの」を求めるのですから…。

この易しいという言葉は「単純な」ということではありません。
たった8つの穴(下のほうの小さい穴を二つに数えると10ですが)を使うだけで実に2オクターブ以上の音域の全ての半音が出せるのです。
音の数で言うと25(6)個です。

ご存知の方も多いと思いますが、現在学校で普通に使われているリコーダーは「バロック・タイプ」(この項を参照なさってください)です。
それ以前は「ルネサンス・タイプ」のリコーダーが使われていました。 ルネサンス・タイプは音域が1オクターブと5音ほどです。 
ルネサンス・タイプのリコーダーは最低音が(いわゆる)「ド」ではなく「レ」のものも存在します。 これは何を物語っているのでしょう?
 そうです…最低音の「ド」は無くても良い…というのがリコーダーの基本的な考えです。

バロック式のリコーダーは、その数ある音を実につながりの良い指使いで演奏することが出来るのです。
まだキーというものがあまり使われていなかったこの時代(18世紀以前)の他の楽器…オーボエ、クルムホルン、コルネット(この頃はコルネットというラッパの仲間…現在のコルネットとは違います…は木で作られていました。もちろん分類上は金管楽器です)…など多くの楽器がほぼ共通の指使いをしていたことを考えても相当合理的な指使いだということが証明されると思います。 「バロック式」の指使いは当時のスタンダードな指使いだったと言えるでしょう。

産業の発達と共に楽器にも様々な改良(その陰で失われたものも多いことを忘れてはいけません!)が重ねられ複雑なキー・システムが考案され、少しずつ変化はして来ていますが、19世紀後半にテオバルト・ベームが新しい方式の運指を考案するまでは全ての木管楽器は「リコーダーの運指」を基本としていたと言っても過言ではないでしょう。


状況ばかり言っていても仕方ありません。
具体的に較べてみましょう。

「バロック式」と「ドイツ式」の大きな違いは<ファ>の音です。
このページをご覧の方はそんなことはよくご存知と思いますのであまりくどくどは書きませんが…。


1:ファの音
G 01234・・・
B 01234・67
したがってG(ドイツ式)の方が簡単(勝ち)!


2:ファ#の音
G 0123・567
B 0123・56・
これは僅差でB(バロック式)の勝ち!


3:高いファの音
G φ1234・・・
B φ1234・6・
Gの勝ち!


4:高いファ#の音
G φ123・5・7
B φ123・5・・
Bの勝ち!


5:高いソ#の音
G φ123・567
B φ12・4・・・
圧倒的な差Bの勝ち!


太字の数字はふさぐ穴の番号 φはサミング(「0」の穴に隙間を空けること)です。


という勝負になります。 結果は3勝2敗で
Bの勝ちです。
この勝負の場合「何勝何敗」より「いかにスムースな半音階が出来るか」を見ると、高い音についてはドイツ式はバロック式に太刀打ちできないと思います。


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「高い音や派生音なんか使わない」とおっしゃりたい方は以下をご一読ください。
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もちろん普通の授業で派生音をたくさん使うことはないでしょう。
私はリコーダーを立派な「楽器」だと考えています。 プラスティックで出来ているのでどうしても感覚が「簡易なもの」となりますが、材質の点以外はバロック時代に貴族たちが使っていたものと較べても遜色の無いほど素晴らしいものです。 そしてリコーダーが「楽器」である理由は完璧に半音階が出来る楽器がであって、演奏する人がではありません…誤解なさらないように)ということです。 音楽的な環境に恵まれた方は別として、ごくごく普通の小学生が生まれて初めて手にする「楽器」が中途半端なものであって良いのでしょうか?

良い車を手に入れることが出来るのに「日本は高速道路でも最高時速100キロしか出せないのだから軽自動車で十分」と言っていて良いのでしょうか? 「軽自動車は環境に優しい」というような反論はここではなさらないでくださいね(笑)。

音楽に携わる人間にとって「楽器」「楽譜」はとても大切なものです。
少なくとも私は自分の見ているところでこれらをいい加減に扱われると悲しくなります。
どなたでも「自分の好きなもの」がぞんざいに扱われている光景を見るのは嫌なものだと思います。

最初から「楽器」であるという存在でなく「簡易な教材(そしてその陰に潜む安易な授業)」という意識でリコーダーを扱っている風景を見ても私の気持ちは同じく悲しいものです。
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**バロック・タイプのリコーダーは下に行くに従って細くなっています。 これは高い音を出しやすくするためです。…「低い音より高い音が大事」の発想があります。
*ルネッサンス・タイプのリコーダーはリコーダーの管の内径が歌口から下に向かって同じくらいの太さで作られています。


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